東京行きの前日、急に
「時間帯を1時間遅らせて欲しい」
と連絡が入りました。
僕は二つ返事で了解しました。
この時は、時間変更や唐突なキャンセルが「常態」になるとは夢にも思っていませんでした。
当日、まず、麻布十番のコンシェルジュのいるマンションに圧倒されました。
立派な部屋に通され、なんとそこが自宅ではなく教室だというではありませんか。
お金は有り余っている、そんな風に見えましたし、そういうことをお話されました。
どんどん印税が入って来て、税金が大変だ、その経費として内弟子の生活費を出してるから、自分は痛くもなんともないんだ、とおっしゃいました。
支給する生活費は15万、20万、30万と「預かり金」の金額に応じて支払われるという説明でした。
ふと、
「逃亡を防止するための預かり金なのに、なぜその金額に応じて生活費の支給額が変わるのだろう」
という疑問が浮かびました。
しかし、
「それだけの預かり金を出すということは、それ相応の見返りがあってしかるべきということなのだろう」
と、自分の中で好意的に因果関係を創作してしまいました。
ここがそもそもの間違いの始まりだったのです。
なぜかというと、詐欺によくある手口、より多くのお金を相手から引き出す単なる建前にすぎなかったからです。
そうです。
生活費は、約束通り支給されることは全くといっていいほどなかったのです。
K池先生は次々と、いかに自分が師匠と呼ばれるにふさわしい人間かを様々な話と
様々な物的証拠で説明していきます。
「宮里藍にゴルフ指導した」(らしい)時の写真、松坂投手(なぜか)との写真、「ジョン・ウーが教えを乞いに来た」(らしい)時の写真、…
華々しく活躍している数多くの弟子の名前が書き連ねてある巻物、
麻生総理が特別に交付したという本名とペンネーム両方入ったパスポート、
とにかく自分が凄いことを表すものを片っ端から出して、
「信じたかい?」
僕は、そのマンションを出るころには、K池先生のことを
「若手を育成するために心血を注ぐ巨匠」
と思い込まされていました。
そして、内弟子の約束をし、「預かり金」=お金をまずは80万振り込む約束をしたのです。
その日、「預かり証」という書面をK池先生からいただきました。
文面は後でスキャンしてここにも掲載しようと思っています。
そこにはこう書いてありました。
「3月から15万支給する」
「預かり金は本人が返却を申し出た場合すみやかに返却する」
もちろん、いわずもがなですが、全てがウソでした。
この時の僕には知る由もありません。
あの、偉大なK池一夫先生が、ウソなどつくはずがないと思っていたからです。
ましてや、「ころっと忘れていた」などという言い訳を5回も6回も重ねるとは。
その後、K池先生は電話で、
「預かり金は150万払えるなら、200万預かったのと同じようにしてあげる。支給額は15万から20万プラス経費5万つけて月額25万になるよ。これは特別だから誰にも言ってはダメだよ。嫉妬されるよ」
これを大変なご厚意だと思い込んだ僕は、まんまと150万一気に振り込んでしまいました。
この後、さらにお金を請求されることになります。
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